とりあうもの





「ほ〜ら。たかいたか〜い」


 ハクオロは両手に抱いていた赤ん坊を持ち上げ軽く上下に揺らした。



「あきゃあ〜♪」



 ハクオロに抱かれたその赤ん坊は嬉しそうに笑っていた。



「スズハは本当に兄者になついているなぁ。やはり本当の親子っていうのは血でわかるのか?」



 オボロはほのぼのとハクオロとスズハの様子を見ていた。ハクオロは溜まっていた政務を珍しく集中して片づけた。スズハのためである。今は愛しい我が子とのスキンシップの時間である。



「ほ〜ら♪ べろべろばぁ〜♪」



「あきゃい〜♪」



「親ばか丸出しだな兄者……」



 そんなやり取りをしていると、



「失礼します」



 ベナウィが訪ねてきた。



「ん? どうしたべナウィ。今日の仕事は終わったはずだが……まさか追加じゃないだろうな。私は今日はもうやらないぞ。今日は一日スズハと遊ぶんだもんね〜♪」



 明らかにベナウィに嫌な顔をしたハクオロはすぐに表情をコロッと変えて甘ったれた声でスズハの方を向いた。大国を治める皇とはとても思えないほどの愛情の注ぎ方だった。



「……謁見をさせていただきたいと客人がお見えになっています」



 少し表情を硬くしたベナウィは淡々と用件だけを言った。



「むむむ……しょうがない。オボロ、スズハを頼む」


「ああ、わかった」



 如何なる状況でも客人を疎かにすることは国交に影響を及ぼすことをハクオロは皇として理解していた。



「で、ベナウィ。客人は誰なのだ?」



ハクオロは愛娘との時間を割かれて少し不機嫌そうなりながらベナウィにその張本人を尋ねた。



「オンカミヤムカイの賢大僧正(オルヤンクル)様です」



「…………」












 厳粛な雰囲気が漂う朝堂、オンカミヤムカイの賢大僧正直々の御来賓ということでいつもよりも臣下たちの表情が堅く見える。ハクオロは玉座に腰を下し、来賓が顔を上げるのを待っていた。



「ハクオロ皇のこの度の御帰還、オンカミヤムカイを代表して心からお喜び申し上げます」



 顔を上げた美しい金髪と淑やかに携えた白羽の持ち主はその優しく包み込むような声で自らの思いと共に祝辞を述べた。



「いや、こちらこそ出向いてもらい感謝申し上げる。賢大僧正殿」



 ハクオロも厳粛な場を意識してか、言葉を選んでその女性に返す。



「では、今回の来訪の要件をお聞かせ願いたい」



「はい」



 形式的な挨拶を済ませた両国の頂に立つ者はこの後国交や国事について話し合った。














「久しいなウルト」



「ええ。本当に」



 謁見の場を離れて今は以前ウルトとカミュが使っていた来客用の個室に二人はいた。



「「…………」」



 昔の柔らかい雰囲気はなく、少しぎすぎすした雰囲気が場を包んでいた。トゥスクル皇と賢大僧正という地位もあるが、ハクオロが帰還したという知らせからふた月も過ぎたことも影響してしていた。お互い政務が忙しく、先の戦から変ろうとして混乱している時期に他国に訪れるようなことはできなかったのである。




「……やっと、」



 ウルトが先に口を開いた。



「……やっと、お会いできました」



 そう口に出したウルトの声は震えていた。



「あの日、私が、立場を忘れて、どんなに、どんなにあなたに会いに行きたかったか……」



 途切れ途切れにウルトはそれまでため込んでいた言葉を出すように話す。



「すまない」



「――ッ」



 ハクオロがウルトにそう言った瞬間、ウルトはハクオロの胸に飛び込んだ。



「会いたかったです。会いたかった。ハクオロ様」



「ハクオロでいい」



「ハクオロ……ハクオロ……ハクオロ……」



 ウルトは何度もその名を呼び続けた。









「申し訳ありません。お見苦しい所を見せていまい」



 あの後しばらくハクオロの腕の中で泣いていたウルトは、今は少し距離をあけて恥じらいを見せていた。



「いや、構わないさ。久しぶりにウルトを感じることができたしな」



「もう」



 先ほどのぎすぎすした雰囲気は消え、暖かいものが二人を包んでいた。ウルトは頬を少し膨らまし拗ねている。ハクオロがウィツァルネミティアという事実を隠していた頃とは違い、少女のような少しあどけない自分をハクオロに見せていた。




「失礼します」



 そう言って部屋に入ってきたのはエルルゥとカミュだった。



「……お話はお済ですか?」



 エルルゥは怒気を含めながらそう言った。ここ最近エルルゥは機嫌が悪いときが多い。それは長い間ハクオロと離れていたせいか、周りにいる女性たちが積極的に彼にアプローチしているからである。



「あ、ああ」



 ハクオロはその怒気に完全に呑まれてしまい、少し身を引いた。




「お久しぶりです。エルルゥ様」



「ええ。お久しぶりですウルトリィ様」



 そう対応したエルルゥは怒気をコロッと親しみの情に代えて返事をした。ウルトとは一緒に食事係をした仲でもあり、基本的に仲良しなのである。




「お姉さま。久しぶり〜♪」



 エルルゥの雰囲気に少し呑まれていたカミュが気を取り戻して自分の姉の胸に飛び込んだ。



「カミュ! 元気だった?」



「うん! お姉さまは?」



「私もよ♪」




 微笑ましい姉妹の様子にエルルゥもハクオロを怒る気をなくしたようでやさしい顔をしてその様子を見守っていた。



「あら、お邪魔だったかしら?」



 そんなことを言って入ってきたのはカルラだった。



「カルラ。お久しぶりね」



「ええ。お久しぶりですわ」



「お互い変わらないわね」



「あなたは賢大僧正になりましたわ」



「もう」



 二人は久闊(きゅうかつ)を叙すように懐かしむように会話した。ハクオロもこの平和な日常がいつまでも続けば良いと心から思った。






 しばらく他愛のない会話をしていた一同の耳に入ってきたのはこの世で最も無垢な存在の泣き声だった。



「あぁぁぁっ!! うぃえあー!!」



「兄者さっきからスズハが泣き止まないんだ。何とかしてくれぇ」



「ほ〜らスズハ様ぁ。兄者さまですよ〜」



「お父様ですよ〜」



 慌てて部屋に入ってきたのはオボロとドリィ・グラァだった。オボロは急いで父親であるハクオロにスズハを手渡す。



「わわわ! スズハちゃ〜ん。よ〜ちよち」



「あああぁぁ!」



「な、何故だ? いつもなら泣き止むのに!」



 ハクオロはいつもと違うスズハの様子に慌てふためいていた。



「もう、貸して下さいハクオロさん」



 その様子を見かねたエルルゥがそう言ってスズハに手を伸ばすと、



 ヒョイ――



 と、横から手が伸びてきてスズハを先に奪われた。



「どうしたの〜ママが恋しいの〜?」



 そう言ってスズハをウルトはその豊かな胸に優しく包み込むように抱いた。そうしていうるとしばらくしてスズハは泣き止み、静かに寝息を立てた。




「「「……………」」」




 一同は茫然とその手際の良さを見ているだけだった。やがてスズハが熟睡した頃合いを見計らってウルトが口を開いた。




「ハクオロ様、この子はもしかしてユズハ様の?」



 あっけにとられていたハクオロはそう聞かれて一瞬答えるのが遅くなった。



「あ、ああ。その子はスズハ、私とユズハの子供だ。見た事無かったのか?」



「ええ。私も(まつりごと)で忙しくて……でもやはりそうでしたか。とてもユズハ様に似てますもの」



 そう言ってウルトはスズハの寝顔を覗きこむ。従来子供はその外見を母から受け継ぐもので、スズハはユズハと同じ耳の形をしていた。



 スズハの寝顔を見ていたウルトは思い出したようにその言葉を言った。


「……と言うことは、スズハ様はトゥスクルの第一皇女様で、ユズハ様は正室に入ったことになりますね」



 場に少し沈黙と言う名の風が吹く。確かにスズハが第一皇女である以上、その母親であるユズハは正室になる。しかし、その場にいた誰もがそんなことを考えたこともなかった。



「あ、ああ。確かにスズハは私の娘だからな。事実上ユズハは私の正室ってことになるなぁ」



 ハクオロは何か納得したような口調で言う。



「そ、そうだよな! ユズハは兄者の子を産んだのだから正室はユズハだ!」



 オボロはこの流れに乗ったようにユズハがハクオロの正室であることを主張した。



「まっ待って下さい。でもユズハちゃんは式を挙げてないじゃないですか!」



 納得できていない人第一号にエルルゥが声を上げた。



「でもユズっちはおじさまの子供をお腹を痛めて産んだんだし、やっぱりユズっちがおじさまのお嫁さんなんじゃ……」



 友達思いのカミュは小さくだがエルルゥに反発する。



「うっ、で、でも!」



 それでも諦められないとエルルゥは何か言おうとするが、



「エルルゥ、ユズハはその命をかけてスズハを産んだのですわよ。その辺のことをくみとってあげてもよろしくなくて?」



「はい……」



 カルラの一言に何も言えなくなってしまう。



「じゃ、じゃあ第一側室は――」



 エルルゥがこれは譲れないと主張しようとすると、



「私です♪」



 とそれまで黙っていたウルトが主張した。



「「「………………」」」




「わ・た・しです♪」



 しかも皆が沈黙する中、二回言った。もちろん他の女性陣が黙っているわけはない。



「な、どうしてそこでウルトさんが出てくるんですか!」



「そうですわ。次に主さまの室に入るのは私ですわ!」



「なっ! カルラさんまで何を言ってるんですか!」



「そうだよ。おじさまはカミュの旦那さんだよ! お姉さまも変なこと言わないで!」



「だぁー! カミュちゃんまで何言ってるのよ!! ハクオロさんは私のものです!」



 段々と第一側室討論が激しくなってゆく。



「それこそ可笑しいですわ。 エルルゥはただ最初に主さまと出会っただけでしょ? 私は主さまとウィツァルネミティアの契約を交わしているのですわよ」



「そ、それなら私だって! ハクオロさんとウィツァルネミティアの――!!」



「破棄されましたわね」



「――ッ!」



「私聞いてましたわよ」



「私も〜」



 カルラとカミュは口裏を合わせる。



「か、カルラさんだって! あの時ハクオロさんに!! 言われたじゃないですか!」



「ええ、『自由にしろ』と言われましたわね。それで? 別に契約は破棄されてませんわ」



「ううぅ、そ、それなら、カミュちゃんは関係ないでしょ!」



 自分が不利になったのでエルルゥはカミュに矛先を向けた。



「私は、おじさまの列記としたムツミっていう只ならぬ関係があるもの」



 確かにカミュの中にムツミは存在していて、その関係は疎かにできない。



「って! 娘は普通父親と結婚しません!!」



「うん。でもムツミがおじさまの娘ならその拠り所の私はムツミのお母さんだもん♪ だからおじさまはもうカミュの旦那さんなんだよ♪」



 カミュがムントとの勉強が役に立ったのか、それともアルルゥのイタズラの機転の速さから学んだのか、結構小賢いことを言った。



「そんな無茶苦茶がありますか!」


「そうですわ!」



 今度はエルルゥとカルラがカミュに反発する。



「あ〜ん。旦那さま〜♪」



「お、おい。カミュ!」



 そう言ってカミュはハクオロに抱きついた。エルルゥとカルラは沸騰しそうになりながらハクオロとカミュを引きはがそうと立ち上がり、



 パン! パン!



 ウルトが二度手を叩いた音で、その騒動が一時的に止まる。そして抱きかかえたスズハが不機嫌そうに顔を歪めているのを少しあやしてまた寝かした。



「ハクオロ様。これを」



 そう言ってウルトが懐から出したのは、この国ではあまり使われていない紙で書いてある手紙だった。




「これは?」



「お父様からです」



「ワーベ殿から?」



 そう言って以前の賢大僧正であるワーベの手紙を開きハクオロはその内容を黙読し始める。そして、



「こ、これは!」



「ええ、そういうことです♪」



 ハクオロが驚いたのに比べ、ウルトはどこか嬉しそうにしている。



「ちょっと貸して下さい!」



 そういってエルルゥはハクオロから手紙を引っ手繰り、その手紙を音読し始めた。






 ハクオロ殿この度の御生還真に嬉しく思っております。さて国交のことは賢大僧正が話したのだろうからこの手紙では申しませんが、娘たちを思う一人の父親として言わなければならないことがあります。
 
 聞くところによると娘たちとはもう契られたと聞き申した。父親としては寂しい気持ちもありますが、それはこの際言いますまい。しかし二人とも女であると同時に國を背負う姫でもあります。
 
 故に、ご自分のとった行動にはそれなりの責任をとってもらわなければなりますまい。お互いの都合もございましょうが、勝手ながら華燭の典を開かせてもらいたい。三日ほど遅れてそちらに出向きたく思います。娘たちの晴れの場楽しみしておりますぞ。






「……ウルトリィ・カミュの父、ワーベ」



 声を震わせながらエルルゥは手紙を握り締めていた。




「「「………………」」」




 なんとも言い難い沈黙が辺りを包んでいた。




「ユズハ様は変わらずハクオロ様の御正室で構いません。で、三日後に行われる華燭の典を際に私が第一側室で、カミュが第二側室になりますので♪」



 ウルトが嬉しそうにそう言った。



「わ〜い♪ これでおじさまと私は本当の夫婦だね♪」



 カミュも特に順番を気にしていないのか、ハクオロの側室になるという事実に喜んでいた。



「あ、いや、しかしだな……。なぁオボロ?」



 ハクオロは歯切れ悪い言葉で、義弟に尋ねる。



「ま、まぁ。ユズハが正室っていうことなら俺は文句ないがな」



 オボロはこの後の惨劇を予知したのかウルトの腕に抱かれいたスズハを抱き上げて足早に部屋を去った。



「「あ、若様〜」」



 その後をドリィ・グラァが付いて行った。



「「………………」」



 約二名、反応できずにただ怒りを貯め込んでいるものたちがいる。そこに、




「失礼します」



 ベナウィが部屋を訪れた。



「あ、ベナウィか、一体どうした?」



 ベナウィがハクオロを訪れる理由は大抵が政務なので、この場から逃げられると思ったハクオロは天の助けだとばかりにその言葉を待った。



「いえ、聖上の正装を速急に御作りしますので寸借合わせをしていただきたいのですが?」



「へ?」



 待っていた言葉はベナウィから帰っては来なかった。



「急いでください。職人を待たせていますので」



「ちょっとまてベナウィ、お前知っていたのか!?」



「なにをです?」



 何を聞いているのかとばかりにベナウィはハクオロに返す。



「いや、だからこの華燭の典のことだ!」



「はい、ウルトリィ様から先ほど事情を聞きましたゆえ、今、國を挙げて準備しております」



「な、なんだと! なぜ私に確認をとらなかった!!」



 ハクオロはこのとんでもない事態をどうする気かという意味を込めてベナウィを怒鳴る。



「確認を取ろうと取らまいと大国であるオンカミヤムカイが嘆願というよりも命令に近い形で指示してきたのなら避けられません。それにこれは我が國にとっても有益なものですし、断る理由がありません」



 ベナウィは今更何を言っているとでも言うようにハクオロにそう告げる。



「し、しかしだな……」



 ハクオロは縮こまる。



「おじさまはカミュたちのこと嫌いなの?」



 カミュが突然そんなことを言い出す。



「い、いやそう言うわけではないのだがな……」



 もうハクオロは八方ふさがりになっていた。そして、



「そうですよ。カミュこれから『夫』になる方に対して失礼ですよ」



 と、あえてその単語を強調してウルトが言った。




――ドン!!




 その音の発信源は先ほどまで第一側室の座を巡って討論していた敗北者たちからだった。ハクオロが見れば、両者の足元に穴があいている。




「ハクオロさん」「主さま」



 ほぼ同時にその声は発せられる。っとそこに




「せいじょおおお!」




 トウカ登場。




「どういうことでござるか! ウルトリィ殿とカミュ殿と式典を挙げるとは!!」



 部屋に入って来ていきなりハクオロの襟をつかんだトウカは乱暴にハクオロを揺さぶった。



「おおおお落ちつけぇぇトウカぁぁ」



 頭を揺さぶられながら必死に弁解しようとする。



「おと〜さん、カミュち〜と結婚する。ほんと?」



 いつの間にかアルルゥも来ていた。



「そうだよアルちゃん。だから私アルちゃんのお母さんになるんだよ♪」



 すごく微妙なことをカミュは胸を張っていう。アルルゥはその揺れる胸を見て



「おね〜ちゃんよりは、っぽい」



 とぼそっと言った。



 言われた張本人はというと、



「ハクオロさん! はっきり言ってください! 『私の一番はエルルゥだよ』っと!」



 無理難題を吹っ掛けていた。部屋の中は暴れるトウカとエルルゥのせいで無茶苦茶だった。




「わかりましたわ。私は認めますわ」



 カルラから発せられたその一言に静寂が辺りを包む。



「か、カルラさん。何言ってるんですか?」



 エルルゥは信じられないと目を開く。



「いつまでも過ぎたことを口にしていては見苦しいですわよ」



「そ、そんな……」



 カルラの一言にエルルゥはしょんぼりする。



「なら、カルラはこのまま聖上がウルトリィ殿と結ばれてもよりと申すのか!」



 そう言ってトウカがカルラに詰め寄る。この時、カミュが「わたしもだよ〜」と呟いたことは余談。



「ええ、構いませんわ」



「カルラわかってくれたのね」



 カルラの言葉にウルトは嬉しそうに言う。



「ええ、國が絡んでは私たちはどうにもできませんわ」



 カルラが本当にそう思っていると一同はその様子からくみとれた。



 しかし、



「でも華燭の典は三日後ですわ♪」



「「「???????」」」



 突然のカルラの言葉にその場にいた皆は最初言っている意味が分からなかった。



「ベナウィ。華燭の典はどこまで準備できて?」



 突然カルラに尋ねられたベナウィだがとりわけ慌てずに答えた。



「式場の方はすぐに用意できる状態になっています。来賓の方々には今しがた書状を送り、後は聖上の身なりの方だけですが」



「それでは式場は今すぐに準備できるのですわね?」



「ええ」



「十分ですわ。では準備をお願いしたしますわ♪」



「は、はぁ」



「「「?????」」」



 皆、カルラとベナウィのやり取りについていけていなかった。



「……――! 分かりました。今すぐ準備を」



 ベナウィは何か思いつくことがあったようですぐさま部屋を後にした。



「一体どういうことだ? カルラ?」



 ハクオロがその場にいた一同を代表するかのようにカルラに聞いた。



「いやですわ。私と主さまの華燭の典の準備ですわ♪」



「「「――ッ!!」」」



 カルラのその言葉にその場にいた全員が驚いた。



「な!? カルラ。あなた一体何を!」



 それまで平常を保っていたウルトもさすがに驚いた様子だった。



「あなた達と主さまの式が三日後なら私がその前に式を挙げれば、いいだけですわ♪」



「素晴らしいですカルラさん! 天才です!」



 エルルゥがここぞとばかりにカルラを褒める。



「うむ! カルラは武芸だけと思っていたが、文武両道だったとは」



 トウカもカルラを褒めた。



「あら褒めても何も出ませんわよ。それにトウカのは褒め言葉ではありませんわよ。……では主さまこちらへ」



 そう言ってカルラはハクオロを部屋の外に出そうとする。ハクオロはもう疲れたのかぐったりしていた。



「ちょっと待って下さい」



「な、何ですの? エルルゥ」



 ギクッと体をさせてカルラが振り向く。



「つまり最初に式を挙げたもん勝ちというわけですよね?」



「え、ええ」



 カルラはぎこちない顔で答える。



「……させません!」



 エルルゥのその言葉が引き金となり、部屋でハクオロの取り合い、ではなく戦が始まった。








 そんな女性陣が争っている中、ハクオロは疲れきって意識がぼうっとしていて早く部屋で休みたいと思っていた。そこに、



「おと〜さん。こっち」



 アルルゥが手を引いてハクオロを連れ出した。ハクオロは娘のその気遣いにただ意識も朦朧として付いて行った。










 翌日、女性陣が皇宮を半壊させるほどの激しい戦闘を繰り広げている中、アルルゥがいつの間にか式を挙げたことをハクオロはベナウィから知らされる。今朝起きた時、アルルゥが満足そうな顔で隣に寝ていたのはそのせいかと理解したのもつかの間、戦いに疲れきった女性たちが再び咆哮を挙げてハクオロに詰め寄った詳細は語らなくともわかるだろう。こうしてわずか二日で皇宮が全壊した「トゥスクルの再壊」は長い間語り継がれたそうな。






 結局、側室に順位をつけずに、等しく同じ側室っということで話がまとまったことは余談である。






つづく…っぽい(アルルゥ)



あとがき
 みなさまこんばんわ行天です。疲れました。………………あっ! すいませんいきなりこんな調子で、いや〜今回はなかなかいいのができたとは思ったのですが、朝の7時からこれを書き始めて早11時間。長かった。しかし、間に休憩をしっかりいれたのでなんとかできました。グレンラガンの最終話よかったなぁ。メインメンバーがほとんどカップル成立しなかったけど……(失言)。ハクオロとユズハの子供の名前は「スズハ」にしました。「すだち」の「す」にユズハを加えた名前です。いや〜皆様から名前を募集したのですが、所詮はアクセス1000突破したぐらいの弱小サイトが粋がってしまいました。申し訳ない。っという感じで作ったわけですけども皆さん感の良い方は気付いたかもしれませんが、とある重要な2キャラクターが私のうた二次に出ていないんです。べ、別に忘れたってわけじゃないんですよ。いや、本当に(汗)。 ちゃんとノーマルでもパロディでも出しますよ。多分。っであとはパロ版についてご報告。第4弾のパロから多元宇宙に飛ぶぐらいの枝分かれが起こる予定ですので書き上げた時も怒らないでくれると助かりますw では良い読書の秋を!

2007年9月30日 行天大翔




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